「ミルクボランティア」という制度があるのをご存知ですか? 「ミルクボランティア」とは保護施設や団体で保護した猫のうち、哺乳や排泄のお世話等が必要な生後間もない時期の赤ちゃんたちのお世話をするボランティア活動です。
「ミルクボランティアに興味がある」「具体的なやり方や応募方法が分からない」など、疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。本記事では、子猫を育てる「ミルクボランティア」とは一体どのようなものなのか、活動の概要ややり方、始め方などを丁寧に解説します。
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目次
生後間もない保護猫を預かるミルクボランティアとは?
動物愛護センターや行政機関には毎日たくさんの犬猫が引き取られています。収容された保護犬・猫がそのまま殺処分とならないよう、動物愛護団体や保護活動団体が引き取り、新たな飼い主へつなぐ活動が実施されています。
実は保護される猫の中でも、実に半数以上が子猫たち。生後間もない子猫は昼夜問わず、数時間ごとの哺乳や排泄ケアが必要となるため、団体スタッフの対応だけでは人手が足りません。
そこで、子猫を一時的に預かっていただき、育成(哺乳や排泄を含むあらゆるお世話)にご協力いただく「ミルクボランティア」の存在が必要となります。ミルクボランティアという存在により、これまで殺処分や衰弱死など、悲しい結末になってしまっていた子猫の命を未来へ繋ぐことができるのです。
ミルクボランティアのやり方・仕事内容
ミルクボランティアに託される活動内容は、主に以下の4つです。
- 1日2〜3時間おきにミルクを与えます
- 排泄の介助
- 毎日の健康観察をして飼育日記を書きます
- 温度管理と保育環境の設定
どれも生後間もない子猫の健康を守るために重要なお世話となります。具体的なやり方について、詳しくみていきましょう。
1.2~3時間おきにミルクを与える(授乳ケア)
子猫も人間の赤ちゃんと同じように、昼夜を問わず頻回にミルクを与えなければなりません。
粉ミルクを溶かすお湯の温度・体重に合わせたミルクの量などは、専用ミルク商品に説明されています。参考にしつつ、体重増加量などを加味しながら調整します。
ミルクは、子猫が母親のお乳を飲むのと同じうつ伏せの体制で飲ませてあげましょう。あお向けでミルクを与えると、誤嚥(ごえん)してしまうリスクが高まります。
また、哺乳器を強く押してミルクを無理やり与えるのも危険です。無理をせず、子猫が自力で吸うのをゆっくり補助してあげることが大切です。
飲むのに時間がかかりすぎた場合、ミルクが冷めてしまうため温め直してあげることも必要です。頭がフラフラ動くと上手く吸えなかったりするため、頭が動かないようやさしく支えてあげましょう。
昼夜を問わない授乳のお世話は、ミルクボランティアにとって寝不足が続く体力的にきついお世話になります。こうした事情を理解したうえで活動に取り組むことが求められます。同時に、愛らしい子猫が日々成長していく様子を間近に見られ、「疲れも吹き飛ぶほどの喜びがある」というお声も多いです。
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2.排泄の介助
離乳前の子猫は自分の力で排泄できません。本来であれば母猫が尿道口や肛門を舐め、刺激を与えることで排泄を助けます。
母親の代わりを務めるミルクボランティアも、陰部を優しく刺激して排泄を促す手助けをする必要があります。排泄が上手くできないままでは、オシッコやウンチがお腹に溜まってしまい、圧迫感からミルクを飲んでくれない、などのトラブルに繋がることも……。
授乳の時間の度に、尿道口や肛門にオリーブオイルを塗り指先で軽く刺激したり、お湯で濡らしたコットンなどでトントンと軽くたたいたりするなど、排泄のサポートも大切な役割のひとつです。
また、子猫は下痢を起こしやすく、お尻や体が汚れてしまうこともあります。濡れたままでは体温が下がり、健康状態に影響する可能性もあります。その都度ガーゼやコットンなどできれいに拭き取り、清潔に保ってあげることも重要です。
3.毎日の健康観察・飼育日記へ記録
健康状態や成長をしっかりチェックすることも、ミルクボランティアの重要な活動のひとつです。
- 与えたミルクをしっかり飲み込めているか
- 消化吸収できず下痢などを引き起こしていないか
- 体重は増えているか
少々面倒に感じるかもしれませんが、なるべく細かく丁寧に記録に残しましょう。具体的な記録内容をご紹介します。
◎体重測定(1日2回)
体重測定は、キッチンスケールや体重計に箱を乗せ、その中に子猫を入れて実施します。測定頻度は1日に2回が基本です。
しっかりとミルクを飲んでくれると、1日5〜10グラム(多いときは15〜20グラム)も体重が増え、成長を実感でき楽しみも倍増します。
◎飼育日誌・成長記録ノート
毎日の体重を記録すると共に、わずかな変化も含めて細かく記録します。
- 排便の有無や下痢はしていないか
- ウンチの色や状態はどうだったか
- 体調はどうだったか
- ミルクをどのくらい飲み、どの程度体重が変化したか
客観的に数値で分かるものは具体的な数値を記録しますが、日々お世話を担当するミルクボランティアだからこそ感じる些細な違和感など、できるだけ詳細に、情報共有をすることが望まれます。
日々の変化をしっかりと書き留め保管しておきます。目が開き始めたときや歯が生え始めたとき、離乳食が始まった時期も細かく書き留めておくと、成長後に新しい家族(里親)へ迎えられる際に、成長を垣間見られ喜ばれることもあります。
ミルクボランティアはいつまでお世話をする?
ここまで、ミルクボランティアが実践する具体的なお世話のやり方について解説してきました。ですが、こうした子猫のお世話期間(ボランティア期間)はいつまで続くのでしょうか?
答えは、預かり時の子猫の週齢にもよりますが、およそ生後2か月になるころまでです。授乳期間を終え、離乳食の期間を過ぎ固形フードが食べられるようになるまでが、一般的に生後2か月前後といわれます。よって、ミルクボランティアの役割もこの頃までを目安とするケースが多いです。
その後は保護団体へ返還し、家族としてお迎えいただく里親へ譲渡することになります。
ミルクボランティアは大変な面も多々あります。ですが、ミルクボランティアという活動が多くの命をつなぎ、子猫たちの幸せの第一歩を創りあげるのです。
ミルクボランティアの始め方
では、本格的にミルクボランティアとして活動を始めるにはどうすればいいのか、ボランティアの応募から申請手続きなど、一般的なミルクボランティアの始め方についてステップごとに解説いたします。
STEP1.募集している保護団体を選ぶ
最初に、ミルクボランティアを募集している自治体や動物愛護センター、保護団体などを探しましょう。動物たちの送迎等を考慮し、ボランティアの活動条件を「近隣地域に在住」としているケースも目立ちます。よって、最初はご自宅近くの該当施設等から探し始めるのがおすすめです。
子猫を保護している自治体や動物愛護団体などで「ミルクボランティア制度」を設けているかどうか確認し、募集がある場合は情報を収集します。Webサイト上の掲載情報をチェックするほか、細やかな情報は問い合わせページなどをうまく活用しましょう。
最近では公式SNSアカウントなどを通じて最新情報を発信していることもあります。定期的に確認するのも有効です。
STEP2.ミルクボランティア講習会を受講する
ミルクボランティアには一定の知識が求められるため、ミルクボランティア講習会を実施している団体も多いです。講習会では、活動の流れや管理方法などを学べます。
講習会への参加や受講がミルクボランティアの活動条件となることもあるため、日程や参加方法を確認のうえ申し込みましょう。
STEP3.登録申請後、ミルクボランティアに応募する
講習会の受講や各種募集条件の確認をし、要件をすべて満たしたうえで「ミルクボランティア登録申請書」を提出します。団体や自治体によってはメールで受け付けているところもありますが、郵送や現地での提出を求められるケースもあります。
ご自身の希望する登録団体・自治体の指示に従って登録を済ませましょう。場合によっては子猫の飼育環境を実際に確認するため、職員やスタッフがご自宅まで伺い、現地調査を実施することもありますので、あらかじめ理解しておきましょう。
これで団体のボランティアスタッフとして認定してもらえ、子猫を預かる準備は完了。その後はボランティア募集案内に従って、活動をスタートできます。
以上はあくまで一般的な流れであり、自治体や各団体によって異なる場合があります。必ず希望団体の公式案内をご確認ください。
ミルクボランティア活動するための応募条件とは
ミルクボランティアになるためには、講習会の受講だけでなくさまざまな条件をクリアすることが求められます。
生後間もない子猫は免疫力が低く、数時間ごとの丁寧なお世話が健康面を左右します。よって、ボランティア活動を希望していただいたとしても、お住まいの環境や条件によってはお願いできないこともあります。ミルクボランティアとして活動をスタートする前に、応募条件をしっかり理解しておきましょう。
以下、一般的な条件を挙げていきます(詳細は各団体により異なります)。
- いつでも連絡が取れる状態であること
- 長時間の留守番がないこと(乳飲み子は2~3時間置きの哺乳が必要)
- 猫の育成が可能な住宅にお住まいであること(賃貸住宅等の場合、動物の飼育許可が書面で確認できること)
- 申請したご本人自らが子猫を預かり飼育すること(第三者へ預けたり任せたりすることはできません)
- 車を使用し、登録機関へ子猫の送迎が可能であること
- 投薬や健康観察のため、必要に応じて登録機関に子猫を連れてくることが可能であること
- ミルクボランティアの応募に関し、同居家族全員の同意が得られていること
- すでに犬や猫を飼育している場合は、下記の事項を行っていること
・(犬)狂犬病予防法に基づく登録・狂犬病予防注射
・(猫)完全室内での飼育
・(共通)混合ワクチン接種、ノミやダニ、フィラリアなどの予防
・(共通)先住犬・猫と生活スペースを分けることができる - ボランティア開始前に、自宅訪問調査を行うことに同意していただけること
上記のほか、事前講習会やオリエンテーションの参加を条件に含める団体もあります。ボランティアとして登録を希望する団体や自治体の要件をしっかり確認するようにしましょう。
子猫のミルクボランティア よくある質問
最後に、実際にミルクボランティアとして活動をする方からよく耳にする質問内容について、あらかじめご説明いたします。
Q1.活動に費用はかかる?どこからが自己負担?
ボランティア活動に必要な物資を団体から支給されるケースもありますが、支給または貸与された物品以外の費用は、基本的にミルクボランティアスタッフの自己負担となります。
例えば、最初に支給された分以外のミルク購入費用、送迎時にかかる往復の交通費、緊急で病院を受診した際の治療費(※)などはご負担をお願いしている団体が多いです。
※建て替えをお願いし、後ほど領収書を提出することで団体が負担してくれる場合もあります。
預かり先であるボランティアスタッフの自宅にやってきた子猫は、急な環境の変化などで体調を崩してしまうことも珍しくありません。緊急時の受診先となる動物病院の情報や連絡先などは、あらかじめ入念に確認しておきましょう。
ボランティア活動中はフード購入費やトイレ用品などの消耗品代、交通費に加え、もしもの時の医療費負担(一次的負担を含む。)の可能性も理解していただければと思います。
※詳細は各登録希望団体へお問い合わせください。
Q2.お世話に必要な道具はどうする?自分で準備するものは?
子猫の預かりをスタートするにあたり、必要な道具や物資を準備しなければなりません。その際、最低限必要となる物資は各団体から支給されることが多いです。
以下、自己負担ではなく各団体から支給・貸与(レンタル)してもらえる代表的な物資をまとめました。
<支給される物資>
- ミルク等のフード類
- 哺乳瓶やスポイト
- ペットシーツまたは猫砂
<貸与される物資>
- 体重計
- 動物用ヒーター
- キャリーケースまたはケージ
- フード用の食器類
ただし、排泄に使用する猫用トイレや追加で必要となるフード類、トイレ用品の購入費はボランティアに負担をお願いするケースが多いです。
条件は団体それぞれで異なります。各団体の指示に従って支給されるもの・レンタルしてもらえるもの・ご自身で用意するものを確認しましょう。
ミルクボランティア活動に興味がある方へ
生後間もない子猫を一時的に自宅で預かり、授乳や排泄の介助をしながら育てていただくことが「ミルクボランティア」の活動です。
人間の赤ちゃんと同じくらい丁寧で頻回なお世話が必要となるため、寝不足になる上に体力的にきつい活動であることは事実です。
また、子猫の死亡率は高く、育てている子が亡くなってしまうケースも珍しくありません。
ミルクボランティアスタッフになるには、この点をしっかり受け止めなければなりません。
ただ、それ以上に子猫の成長に間近で寄り添い見守れるのは、ミルクボランティアだからこそ味わえる喜びでもあります。
ミルクボランティアはまだまだ少ないのが現状です。「保護猫のために手助けをしたい」と思われている方は一度、お住いの地域や保護団体に足を運んでみませんか。これを機に「ミルクボランティア」に興味を持っていただければ幸いです。
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