財団の理念と目指すもの

犬猫生活福祉財団の理念と目指す未来について

財団の理念

年間3.2万頭以上もの犬・猫の殺処分が行われている、日本。(※)
家族とともに幸せに暮らしている子がいる一方で、この瞬間も、助けを求めている子、家族を探している子が、たくさんいます。
※環境省⽝・猫の引取り及び処分の状況(平成31年4⽉1⽇〜令和2年3⽉31⽇)を参照

私たちの使命は、そんな「いのち」を救うこと。そして、そうした子たちが生み出されない環境をつくること。

日本全国にシェルターを設置していくことで、犬・猫を保護。新しい家族との、しあわせな出会いを創出します。また、傷ついた犬・猫のケアや不妊去勢を行う専門クリニックの開業・運営、各地域にある保護団体への支援を実施。広く、多面的な活動を通して、犬と猫のいのちを、幸せを、守ります。

日本を、「殺処分ゼロ」の国にする。そして同時に「動物福祉」を担保する。それは、簡単なことではありませんが、みんなが望み、行動すれば、たしかにやり遂げられることなのです。

すべての動物と、その家族が幸せに生きられる、社会のために。私たちは、みんなでつくる、みんなでこの国を変えていく、財団です。

財団の目指すもの ~収容ゼロ、殺処分ゼロ、不適切飼育環境ゼロ~ の3つのゼロを目指します。

人にも動物にも過度な負担がかからない形で継続的に「収容ゼロ、殺処分ゼロ、不適切飼育環境ゼロ」という「3つのゼロ」を達成することを目指します。

動物福祉について

当財団は、犬猫をはじめとした保護動物や、人間の生活圏にいながら野外で生活する犬猫等の動物を対象に、それらの動物の生活の状態、すなわち、動物福祉(animal welfere)を向上させていくことを目的の一つとして掲げています。

動物福祉という言葉は、近年、国内でも様々な場面で使われるようになってきています。それは、動物の保護活動の場面も例外ではありません。

しかしながら、動物福祉の概念は、欧米発祥の考え方であり、国内においては、その理解はまだまだ浸透していない状況と捉えています。また、動物福祉と動物愛護という言葉が混同して使われる場面があるなど、言葉の理解が一致しないこともあります。

ここでは、動物福祉という概念について説明すると共に、当財団の動物福祉に関する考え方についてご説明します。

動物福祉とは

動物福祉という言葉は、動物の実際の状態に対して用いられる用語であり、個々の動物が経験する生活の質について表す用語です。動物福祉の向上という言葉は、動物の生活の質が向上するという意味になります。

動物福祉の評価は、「かわいそう」や「幸せそう」といった主観的な判断によるのではなく、動物の心身の状態を総合的且つ客観的に把握し、判断されます。

「犬にしつけをするなんて、かわいそう」「みんなに抱っこされて幸せそう」という意見を聞くこともありますが、それは主観的な判断です。一方で、動物が本当に満足しているのか、あるいは動物が恐怖や不安を感じているか、不快な環境にいるかどうかについては、動物が置かれた環境や、動物の行動・ボディランゲージを観察することで客観的に判断できます。そして、なんらかの介入により、恐怖、不安、不快を取り除けたかどうかについても、環境や動物を観察することで客観的に評価できます。

動物福祉の基本的な考え方として、5つの自由(Five Freedoms)という考え方があります。①飢えと渇きからの自由、②不快からの自由、③痛み・傷害・病気からの自由、④正常な行動を表出する自由、⑤恐怖と苦悩からの自由、という5分野の自由を多面的に確保することが、動物福祉の向上のためには必要であるという考え方です。

5つの自由の考え方は、動物に苦痛となるマイナスの経験から解放しようという意図から生まれた考え方です。しかし、マイナスの経験がなければ、動物が「生きる価値のある生」を持っているとは言えないでしょう。期待、満足などの前向きな経験の機会を与えることも必要です。そうした、「生きる価値のある生の実現」を目指し、栄養・環境・健康・行動・精神という領域から動物福祉を評価する5つの領域(Five Domains)という考え方も存在します。動物が、前向きな経験の機会を得て、やりがいのある行動を選択することができるように、動物にどのような栄養・健康・環境・行動を提供すべきかについて検討されています。

当財団では、世界的に共通認識が持たれている、5つの自由や、5つの領域といった考え方に基づいて動物福祉の向上を目指していくこととしています。そして、動物福祉の考え方について社会に発信し、社会の皆様と共に、日本における動物福祉向上の具体的な形に落とし込んで行きたいと考えております。

動物愛護とは

日本では、動物福祉よりも動物愛護という言葉の方がよく耳にするかもしれません。動物愛護とは、人が動物を大切にしたいという気持ちを指す言葉です。殺処分ゼロを目指す、動物福祉を向上させるという活動には、動物愛護の気持ちが不可欠です。

一方で、動物をかわいがりたい、動物を大切にしたいという主観的な気持ちが、必ずしも動物のためにならない場合もあります。例えば、犬猫をかわいがってあげようと思い、「抱っこしてあげた」としても、その犬猫が抱っこが苦手で嫌いだったら、動物のためにはなっていません。動物に関わる活動の中で大切なことは、動物に対して一方的に愛情を抱くことではなく、動物が心地よく快適に過ごせているか、よき生を送れているか、客観的に把握し必要に応じて改善することです。動物福祉の考え方は、動物の状態を客観的に把握し評価することをベースとしています。

当財団では、動物愛護の気持ちを出発点にしながら、動物福祉の考え方をベースに活動を行ってまいります。

財団の考える殺処分ゼロとは

殺処分ゼロのための前提

先にも挙げたように、当財団では、①収容ゼロ、②殺処分ゼロ、③不適切飼育環境ゼロを目指しています。これらは、それぞれ深く関連しており、切り離して考えるべきものではないと考えています。殺処分ゼロを目指すために、動物を詰め込み、不適切飼育環境となることはあってはいけません。犬猫の繁殖を抑えること等を通じて収容を減らし、保護される犬猫の福祉を確保しながら実現する殺処分ゼロでなければならないと考えています。

具体的に目指す殺処分ゼロの形

当財団では、保健所や動物愛護センターなど行政機関で行われている殺処分をゼロにしていく取り組みを行っていきます。環境省は、行政機関における犬猫の殺処分について、以下の3分類の区分を設け、統計を発表しています。

①譲渡することが適切ではない(治癒の見込みがない病気や攻撃性がある等)
②愛玩動物、伴侶動物として家庭で飼養できる動物の殺処分
③引取り後の死亡

まずは、この定義における②の区分の犬猫の殺処分ゼロをできる限り早く達成することを目指します。そして、現在、①・③に区分される犬猫の殺処分についても、本当に必要な場合にのみ減らしていくことを目指していきます。現在、①と②の境界線については、各地方行政において判断されています。その動物が、本当に譲渡することが適切でないのか、その判断基準や判断方法については、現場の行政職員の方も日々苦慮されながら考えている状況で、より社会的な議論が必要と考えています。当財団では、保護当初に譲渡が難しい動物に関しても、適切なケアを通じて譲渡出来る対象を広げていきたいと考えており、行政職員の方と連携しながら、その活動を進めてまいります。また、殺処分ゼロを目指すと同時に忘れてはならない問題として、殺処分数に表れない、交通事故や病気、虐待などでいのちを落とす野良猫や野良犬の問題、さらに、悪質な業者により劣悪な環境での生活を強いられたり、それによって人知れずいのちを落としている子たちの問題が挙げられます。当財団ではそうした問題も改善していきたいと考えています。

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