目次
■はじめに
犬猫生活福祉財団の「前橋シェルター(犬猫タウン前橋)」では、猫エイズキャリアの猫ちゃんとそうでない猫ちゃんを別々の部屋で保護できる環境が整っており、猫エイズ陽性の猫ちゃんも数多く受け入れています。(2024年12月時点で9頭を保護中)
「猫エイズ」と聞くと不安に思われる方もいるかもしれませんが、これは人や他の動物にはうつらない病気ですし、発症せずに寿命を全うする子もたくさんいるんです。先住猫がいる場合は、部屋を分けるなどの工夫が必要ですが、一緒に暮らしている方もいらっしゃいます。
今回は、そんなエイズキャリアの猫ちゃんたちを当財団から迎え入れてくださったFさまにお話を伺いました。猫エイズに対するイメージや、実際に暮らしてみての感想など、ぜひ参考にしてみてください。
■インタビュースタート!
犬猫:今日はお時間いただき、ありがとうございます!
Fさま:いえいえ、私の経験が少しでもお役に立てるなら!
犬猫:早速ですが、2年前に迎えた「ごまふく(愛称:ごま)くん」と「まるみ(愛称:みーちゃん)ちゃん」はお元気ですか?
Fさま:はい、おかげさまで! 仲良く元気に暮らしてますよ。
■どうして保護猫を迎えようと思ったのか
犬猫:ごまとみーちゃんの前も、猫ちゃんと暮らされていたんですよね?
Fさま:はい。実家で、迷い込んできた猫ちゃんと暮らしたのが最初です。それもあって、「ペットショップで買う」というイメージはなくて、いつかは保護猫ちゃんを迎えようと考えていたんです。その後もずっと猫ちゃんが好きだったんですが、自分自身はずっと賃貸暮らしだったので、一緒には暮らせませんでした。
昔、職場の外に住み着いた猫ちゃんたちをお世話していたこともありますね。今のようにTNR活動も広まっていなかったので、不妊去勢手術も自分で手配していました。その子たちは、猫エイズや猫白血病の子だったんですが、10年くらい元気に過ごしてくれました。
犬猫:その後は?ごまとみーちゃんの前に、先住猫ちゃんがいたと伺いました。
Fさま:はい。2015年に、保健所から、1か月半の兄妹を迎えました。でも、男の子は11か月のときに病気で亡くなってしまって…。女の子も2022年、7歳になる前に、肝臓が悪くて亡くなりました。猫ちゃんがいなくなった家って、すごく寂しいんです。それで里親のサイトで、次の子を探そうと思いました。その兄弟を迎えたときは、20年くらいは一緒にいるつもりだったのが、思いのほか早く亡くなってしまって…、次こそは長く一緒に暮らせるといいな、と思っていました。そのとき、犬猫生活福祉財団を知りました。

先代の猫ちゃんの「ラッキーくん(左)」と「キララちゃん(右)」
■「ごま」&「みーちゃん」との出会い
犬猫:そこで「ごま」と「みーちゃん」に出会われたんですね。
Fさま:うちから近いこともあって、2022年の12月に譲渡会に行きました。できれば仲のいいペアを一緒に迎えたかったんです。留守番が長いので、1匹だと寂しいかなって。
譲渡会では、ごまは人懐っこくて、誰の膝にも乗ってくるタイプ。みーちゃんはちょっと警戒心が強かったけど、2匹はとても仲良しだったんです。でも、すぐには決めきれず、シェルターのボランティアをしながらゆっくり考えようと思って、ボランティアに応募しました。
エイズキャリアの部屋に行くと、2匹がくっついて寝ていて…。その姿がとっても可愛くて、「やっぱりこの子たちをうちに迎えたい!」と思ったんです。
犬猫:エイズキャリアということで、不安はなかったですか?
Fさま:昔お世話していた子たちが猫エイズや猫白血病でも元気に10年ほど暮らしていたので、「特別に怖い病気」というイメージはなかったですね。でも、次は長く暮らせる健康な子を迎えたいと思っていたから、その点ですぐに決めることができなかったです。

一緒にくつろぐ「みーちゃん(左)」と「ごまふく(ごま)くん(右)」
■「ごま」&「みーちゃん」との暮らし
犬猫:今、健康のケアはどうしていますか?
Fさま:年1回フィラリア予防で病院に行くときに、健康診断をしてもらっています。
犬猫:2人の様子は、シェルターにいたときと変わらずですか?
Fさま:変わらず元気ですが、シェルターにいたときと違う面も見られて、面白いです。シェルターでは人懐っこかったごまが、家に来てみたら意外とビビリで、ちょっと人が来たりすると、隠れて出てきません。みーちゃんはシェルターでは「私のことは放っておいて」という感じだったので、慣れるのに時間がかかるかなぁと思っていたのですが、家猫になったのが嬉しかったのか、最初から甘えてくれましたね。
現在、ごまは5歳、みーは推定6歳です。日中は留守番が多いので、ペットカメラを設置しているのですが、仲良く寝ていることが多いですね。かわいくて癒されます。
■エイズキャリアの猫ちゃんを迎えることに不安を感じる方へのメッセージ
犬猫:F様がすごく自然に、ごまとみーちゃんと暮らしていらっしゃることが分かりました。最後に、今後譲渡会に参加される方や猫エイズになじみのない方にメッセージをお願いします。
Fさま:私は、先代の子たちを若くして亡くしたり、ボランティアをしているときに、幼いのに思いがけない病気になる子がいたり、という経験をしました。最初は「選べるならば、健康な子を迎えたい」と思っていたのですが、そういった経験を振り返って、今元気な子も、どの子も、病気になる可能性があるんだよなぁと思ったんです。
猫エイズだからといって、すぐに症状が出るわけでもないし、発症しないまま元気に長生きする子もいます。一緒に暮らしていたら、かわいくて「この子たちはエイズキャリアの子だ」と思う瞬間なんて、ほとんどないですし。
もし発症してしまったとしても、先代の子を看病していたからこそ思うのですが、猫ちゃんとの絆が深まると思うし、それはそれで、振り返ればかけがえのない思い出です。エイズに限らず、病気が理由でご縁を逃しちゃうのはもったいないと思います。この子と暮らしたいな、と、ピンと来た子がいたら、そのご縁や出会いをぜひ大切にされてみてくださいね。
■まとめ
保護猫ちゃんの中には、病気を持っていたり、怪我があったり、老齢だったり、受け入れることに不安を感じてしまうタイプの子もいます。
ですが、保護猫ちゃんを迎える際に、病気や怪我の有無、年齢だけで判断せず、里親さまのライフスタイルとその子との相性や、たまたま出会えたご縁を大切に、幅広く様々な猫ちゃんに目を向けてみていただけると嬉しいです。